PROJECT

2022〜

Project MOANA

中世の気候異常期におけるエルニーニョとリモートオセアニアへの人類拡散

人類初の長距離航海を成功させた古代ポリネシア人は、西暦1000年頃にリモートオセアニアへ進出しました。その移動経路は、遺跡から発掘される遺物の年代測定や現代人のゲノム解析により明らかになってきましたが、それまで2000年もの間、ニアオセアニアに停滞して拡散をしなかった人類が、突然リモートオセアニアへ進出をしたのか多くの謎が残っています。長距離航海を可能にした要因として、当時の熱帯太平洋域における気候および海洋環境要因が考えられていますが、詳細な記録として残っていません。このプロジェクトでは、中世のサンゴ化石を用いて当時の気候や海洋環境を明らかにし、人類がリモートオセアニアへ移動した謎に迫ります。

2020〜

Project SceNE

科学とアートの融合による環境変動にレジリエントな在来知の高解像度復原と未来集合知への展開

地球環境変動の影響が顕著になる中で、近年の経済発展や人口増加、グローバリゼーションによる生活様式の一元化によって、社会は気候変化や環境事変に対してさらに脆弱になっている可能性があります。地球規模の気候変動と突発的災害の発生は、現在の地域社会が形成される過程において、人の思考と行動に大きなインパクトを与えてきました。その過程には外的、内的な要因により維持された知(在来知)が存在し、現代の我々が将来起こりうる未曾有の環境変動を乗り越えるにあたり選択肢となり得ます。SceNEプロジェクトでは科学的知見に基づいて地域における在来知を再評価し、さらに共感を得やすい地域社会像を得るためにアートを取り入れながら、地域と人類の未来集合知の創造を目指しています。

2024〜

礼文島プロジェクト

二枚貝遺物による北海道の文化変遷および暮らしを支えた気候・海洋環境の高解像度解析

The cultural transition of Hokkaido and climate and marine environment in the archive of the shell remains

北海道は、北方の人類の集団・移住・拡散の基点となっており、その動態を捉えるのに重要です。完新世においては、日本列島を北上・南下する集団移動の影響を受けながら、先史人類の集団の移動とその文化の形成が行われてきました。その移住や文化の変遷は、遺跡から発掘される遺物の変化や、遺物の年代測定等より明らかになってきています。本研究では、先史文化の転換点における居住様式・生業活動と、二枚貝から復元される高時間解像度(季節)の古環境を直接比較することにより、環境の変化が文化にもたらした影響を明らかにしようとしています。

2015〜

Coral CO2 project

産業革命以降の人為起源二酸化炭素の海洋への溶解拡散の履歴と将来予測の高精度化

人為起源の二酸化炭素(CO2)の放出は深刻かつ歯止めの効かない環境問題として認識されてきました。海洋への二酸化炭素の溶け込みに伴う全球的な海洋酸性化が指摘され、近未来の海洋生態系への深刻な影響が懸念されています。では、二酸化炭素が海洋にどのくらいの速度で溶け込み、拡散しているのでしょうか?本研究では、ハワイ諸島の浅海および深海に生息するサンゴの骨格を用いて,各水深における二酸化炭素量の変遷から産業革命以降に海洋へ溶け込んでいった二酸化炭素量の変遷とその拡散速度を明らかにしようとしています。